めんどくさいオジサン

めんどくさいと言いながらいろいろやる趣味ブログ。最近は音楽制作とキャンプ。

2017年、中年男性がおすすめしたい漫画

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12月ですね。


毎年年末になると、その年に読んだ漫画の中で面白かった10作品をチョイスして記事を書いている。
過去記事を調べてみたら、今年で5年目だった。5年間続けることはなかなかだぞ。小学1年生が小学5年生になり、社会人1年目のルーキーが5年目の中堅になる…って全然うまく例えられていないですね。駄文!良し!
今年の傾向としては、子供が持ったことによりその影響で読む漫画が変わった…ということはまったくない。相変わらずどっちかと言えば大人向けの漫画でジャンル関係なく読んでいる。ただ外に呑みに行くことが減ったので、好きな漫画とか映画とか語ってゲッヘッッヘとする時間が減った。さみしい。
したがって今年の感想は例年よりもちょっと熱量が高いかも。うるさかったらすみません。
購入して読んでいる数はざっくり出してみたけど59〜60冊ぐらいだった。5年前ぐらいに比べれば明らかに減ったのかもしれないけど、まぁ子持ちのおじさんなのでこんなもんだろう。うん。

10位 大上さんだだ漏れです - 吉田丸悠

大上さん、だだ漏れです。(1) (アフタヌーンコミックス)
 

 今年読んだ漫画の中でこの作品の主人公が最もキュートでした。
エロいな妄想に囚われつつも、そんな自分を過去のトラウマ(中学生時代にふとしたことからクラス中で下ネタキャラに認定されそれを演じ続けた…)の影響で男性への興味を否定し続ける主人公。
そんな状態で気になりはじめた人は、変わった力も持っている。彼に触れるとその時に思っていることを口に出してしまうのだ。
彼に触れ「ちん⚪︎見せて」と言ってしまって、顔を赤らめる主人公、もうね最高です。ちゃんとラブコメしててこれぞ王道!って感じ。自分はこーいう作品を今後も気軽に読んでいきたい!

9位 初情事まであと1時間 - ノッツ

 

 タイトル通り、初めての情事に向かうまでの1時間をまとめた短編集。ドギマギする男女を愛でる漫画。読んでいるとくすぐったくなってくる。
少し似たような作品で『やれたかも委員会』なんて作品もあったけど、人生のカラフルな時間を切り取りそして並べて漫画にするという企画勝ちな作品だと思う。
また、シチュエーションがファンジーだったり中世だったりバリエーションが様々なところもおもしろい。こんな映像作品を見てみたい。

8位 ファイアパンチ - 藤本タツキ 

序盤は復讐劇としてカタルシスがあってものすごい熱い。読んでいてうおー!ってなって燃える燃える。
集英社的も結構プッシュしていた記憶があり、『進撃の巨人』的なダークファンタジーを目指していたんだ思う。
しかし、話が進むごとに展開が思い描いていたものと違ってくる。ヒーロー映画を撮ることになったり、宗教の教祖になったり、血の繋がりがない人達と何年間も疑似家族として暮らしたり、アングラ演劇を見ているようだ。これってどんな話だったんだっけ?ジャンルは?ってなる。
「友情」「努力」「勝利」のジャンプコミックスとは思えないぐらい変な漫画ですが、そこが魅力的な作品。

7位 マロニエ王国の七人の騎士 - 岩本ナオ

前作『金の国、水の国』では、架空の世界を舞台に正しいこと真っ直ぐやれる人達が世界を良い方向へ導くという理想的な話だったけど、今作もその延長上の作品になっている。
ただ真っ直ぐに理想の世界に導く!というのは難しそうな設定になっている。
国と国の政治関係の難しさ、いい人悪い人でわけることができないキャラクターが増えたことにより、レイヤーが一層深くなっている。
ファンタジーで気軽に読めるんだけど政治的、しかも出口をなかなか見い出させなさそう感じが今っぽいなーと思う。

6位 映画大好きポンポンさん - 杉谷庄吾人間プラモ

映画作りを題材にした漫画。もともとは深夜アニメのボツ企画をなんだったらと漫画にした作品らしいです。
まず著者の映画知識が豊富なのと映画への情熱を感じられる。良いクリエイターとは?という問いへの答えが最高でした。しかもキャラデザインが絶妙のバランスでキャクターが映画語りをしててもめんどくさい奴だとは感じない。良いバランス。
登場する映画プロデューサー、監督、女優、ベテラン俳優みんな魅力的に描かれていて、みんなで一丸となって映画作りをするシーンはパトレイバーのようなライトスタッフ感も楽しめる。
漫画で「映画作り」を描かれた作品だと、黒田硫黄の『茄子』を思い浮かべるがこちらも最高で、もしかしたら「映画作り」は漫画にするには良い題材なのしれない。

5位 AIの遺伝子 - 山田胡瓜

AIの遺電子 1 (少年チャンピオン・コミックス)

AIの遺電子 1 (少年チャンピオン・コミックス)

 

 

AIの遺電子 8 (少年チャンピオン・コミックス)

AIの遺電子 8 (少年チャンピオン・コミックス)

 

ヒューマノイドを人間と共存する世界のショートショート。主人公はヒューマノイドを患者に医者を男。SF作品です。
今年もAI、VR、IoT、仮想通貨などテクノロジーの話題にかかせない年だった。そんなテクノロジーのトレンドが作品で少しブラッシュアップされて反映される。AIはこうなるのか〜と。これが勉強になる。
また『ブレードランナー2049』とかみたいに振りかぶって重みのあるSFではなく、夫婦仲を良くするために脳のアルゴリズムを調整する話とか、サポートが終了したお掃除ロボットを修理する話とか、日常に寄り添った物語が主軸のSFなので、今の世界の延長上にある感じがすごくする。したがってここで描かれている未来が身近に感じるし、そこで起きる倫理の問題なんかもリアルに感じられる。
もしかしたら立派なテクノロジーの本を読むより、この漫画を読んだ方が感覚的にテクノロジーの未来を認識できるかもしれない。
そんな感じで未来を感じたくてGoogle homeを買ってみたんだけど、天気ぐらいしか聞くことがない。笑

4位 ゴールデンゴールド ー - 堀尾省太

 

 前作『刻々』は、圧倒的な画力で描かれる異世界で、人間の業と暴力と間が抜けたようなギャグが混在していて、唯一無二の素晴らしい傑作だた。今作「ゴールデンゴールド」もこれまた素晴らしい作品。堀尾省太さんすごい!
『刻々』の魅力を残しつつも、舞台を異世界から現実世界の過疎化している島にして閉鎖感はキープしつつ、より現実味が増しているところが良い。また『刻々』になかった要素に女性主人公が可愛いってところもものすごーく評価できる。
とりあえず極上のエンターテイメント作品になっていると思うので、万人にお勧めしたい漫画です。読んでください。よければここで買ってください。笑

3位 ロッタレイン - 松本剛

ロッタレイン(1) (ビッグコミックス)
 

 

ロッタレイン(2) (ビッグコミックス)
 

 

ロッタレイン(3) (ビッグコミックス)
 

 血の繋がりのない義理の兄弟の禁断の愛がテーマの作品。こう言うと安っぽく感じるかもしれないが、ドスンと残るヘビーウェイトな作品です。
包帯だらけのボロボロの主人公のアップから漫画がはじめる。素晴らしいかましの一発!かましが素晴らしい作品と言えば映画になってしまうが、デビット・リンチの『ワイルド・アット・ハート』の冒頭シーンが最高…ととにかく冒頭のシーンが最高なのでそこから物語に一気に引き込まれる。
主人公は、何もかも失っている状態の人間。そして自分を正当化をしてどんどん間違った方向に進んでいく。しかし暴走しちゃうのもわかるってぐらい、辛い出来事が続いてとても生きづらそう。同情するよ。
そんな主人公を惑わしたヒロインである妹がやたら色っぽく描かれている。まさにファムファタール。ただ妹も悪意があるわけではなく、ただ未成熟なだけ。二人の関係はやっぱり切ねえ…。
テーマ的にもおもしろいのだが、細かい演出が作品の風格をあげている。なんか映画みたいな漫画です。

2位 月曜日の友達 - 阿部共実 

月曜日の友達 1 (ビッグコミックス)

月曜日の友達 1 (ビッグコミックス)

 

子供から大人になる中学生ぐらいの時期に、痛々しくて恥ずかしくなる過去を誰もが持っていると思う。そんな時期を思い出してあー!!!ってなってしまうスイッチを押すのがうまい阿部共実作品。
特に『ちーちゃんはちょっと足りない』はそこに貧困など社会問題の要素入れているので、すごいところまで到達している思うのだが、『月曜の友達』はそこからまた一つ更新した作品になりそう。
中学生ぐらいのドロドロとした生々しい感情に対して、どちらかと言えば滑稽で悪意がある描いていたことが多かった今までの作品とは違って、今作はキラキラしてて美しいものとして描いている。
はっとしたのは、中学に上がる急に大人ぶるようになった同級生に対して、主人公がつまらねーの!と思う感じ、自分も中学にあがった頃、そんなふうに思ったっけと思い出す。
今までゲームに夢中だった同級生が、いきなり恋愛を歌うJポップを聴き始めて、その感覚が気持ちわりーまたゲームやろうぜ!と感じていたのを思い出した。しかしその感覚は同調圧力や今で言う「中二病」という言葉で揶揄されて、ずっと持ち続けることは難しい。
したがって、『月曜の友達』の世界観は刹那的にあってとても美しい。甘美です。
プロット的に似ている『惡の華』と別の方向性のクライマックスを見てみたい。

1位 デザイナー 渋井直人の休日 - 渋谷直角

デザイナー 渋井直人の休日

デザイナー 渋井直人の休日

 

 滑稽に描かれた文化やファッションや音楽、好きなものを囲まれ丁寧に生きる的な価値観に対して、『カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生』よりも寄り添っていて、『奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール』よりも青臭くなくなって、成熟した作品になっています!
主人公は50代独身の売れっ子デザイナー。好きなものに囲まれ、仕事にもこだわりがあって、才能がある若手アーティストにはフリーでデザインを請け負ったりしている。アート系の古本屋や雑貨屋に行ってはついつい数万円散財してしまうタイプ。
後半、主人公は今までまったく魅力に感じなかった平凡な普通の女の子と偶然の出会いから「テイク・イットイージー(なるようになるさ)」と恋に落ちる。
菊地成孔の『普通の恋』という曲が頭によぎった。この曲は「どんな人でも恋愛の前では平等に平凡になる」と歌っている。どんなカルチャーを身にまとっても凡庸であり滑稽な行動をとってしまうというには、渋谷直角が描いてきたひとつのテーマだと思う。
主人公が「テイク・イットイージー(なるようになるさ)」と良い方向に悟ったのも、音楽かカルチャーか何かしらの影響で「こうあるべき」という結論に至ったのだと。なんでも良い、何かを好きになるって本当に素敵だなーと思う。
渋井直人に幸あれ。乾杯!

 


futsu no koi

 


他に面白かったのは、多様性のあり方を団地内のコミュニティーで表現した石山さやかの『サザンウィンドウ・サザンドア』、夫婦公認の浮気がテーマで自分をひたすら自分をイライラさせた渡辺ペコの『1122』とか、田中圭一の『うつヌケ』は元気が出る漫画だった。『たそがれたかこ』のラストは若干モヤっとしたが良い作品でした。宮川サトシの『情熱大陸への執拗な情熱』も笑わせていただいた。

 

サザンウィンドウ・サザンドア (フィールコミックス)

サザンウィンドウ・サザンドア (フィールコミックス)

 

 

1122(1) (モーニングコミックス)
 

 

うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち

うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち

 

  

たそがれたかこ(10) (KCデラックス BE LOVE)

たそがれたかこ(10) (KCデラックス BE LOVE)

 

  

情熱大陸への執拗な情熱

情熱大陸への執拗な情熱

 

 
それと長年読んできた、石黒正数の『それでも町は廻っている』がラストを迎えた。読み終わった後の余韻は凄まじかったな。最高の漫画体験でした。 

 

mendokusai.hatenablog.com


そんな感じで、是非年末年始お暇な時間があるようでしたら、ここで紹介した作品を手に取ってみてください。


それではちょっと早いですが、良いお年を〜!