今年もそこそこ漫画を読んでいました。
そんなわけで、ここ数年で自分の中で恒例となっている漫画の私的ベスト10を発表しようと思います!って実は毎年で面倒だし、そんなの「このマンガがすごい!」とかに任しておけばって感じるし、ちょっとうざいじゃなかろうかと自意識が邪魔しているのだが、それはそれ。自分は忘れやすいし、時代の流れって速いじゃないですか?
だから、その年に真剣に感動したことをここに書き残して行きたい!ってそんな思いからこれからも続けて行きたいですね。
第10位 ヴィンランド・サガ - 幸村 誠
毎巻、ものすごい画力に驚きながら、哲学的というか、とりあえず新しい考え方を授けてくれる漫画。リアルに考え方に影響が受けていると思う。
第9位 千年万年リンゴの子 - 田中 相
第16回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞受賞作の本作ですが、3巻で完結しました。
妻と取り返すために、神と立ち向かう熱い展開が最後まで続き、ボロボロとなっても健気に妻を求め続ける主人公にかなり感情移入しました。最後までファンタジー的な世界観も残しつつ、とりあえず妻は最高に可愛い!だから辛いと泣いちゃいましたよ。良い作品です。
第8位 うきわ - 野村 宗弘
「とろける鉄工所」で有名な野村宗弘が不倫を描いた作品です。かねてからこの作者が描く女性がとてもキュートだと思っていた自分からしてみればどストライクな作品です。
またこの作品の魅力は、間をうまく使って映画のようになっているところです。会話のテンポだったり、引きショットを入れてきたり、別の風景を入れてきたり、そのような演出から醸し出すドキドキ感。作者のテクニックを感じます。
第7位 狼の口 ヴォルフスムント - 久慈 光久
狼の口 ヴォルフスムント 6巻 (ビームコミックス(ハルタ))
- 作者: 久慈光久
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / エンターブレイン
- 発売日: 2014/10/14
- メディア: Kindle版
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14世紀の初頭、ドイツとイタリアの関所での勧善懲悪モノ。虐殺に次ぐ虐殺を尽くしたヴォルフラムがとうとう…最高のカタルシスです。6巻を読んだかいがあったよ!また打ち上げのシーンがこれまた本当に最高!これで最終巻ではなく、まだ続くようなのですが、ここからもう一盛り上がりするのでしょうか。
第6位 聲の形 - 大今 良時
「このマンガがすごい! 2015」のオトコ編で第一位をとった作品。これにはもう納得です。障害をひとつのテーマなんだけど、序盤は虐め描写がハードで結構引きつって読んでた。虐めてた奴が逆に虐められるってのも誰もが経験をしたり、そんな場面を見たことがあると思うけど、これまでの家庭もリアルでした。
そのあと後ろ向きになってしまった主人公にものすごく共感するし、そこから回復をする物語として最後のほうちょっと端折った感じはあるけど、うまくできていると思う。
フレッシュだったのが自分にとって興味のない、もしくは嫌いなモブキャラは顔が「×」になっていて、それが剥がれるところとか思わずうまい!と声に出したくなったし、今年読んだ漫画の中でもすごく良いシーンだったと思う。
第5位 ボーダー - 渡辺 ペコ
去年は「ニコタマ」にやれてて何度も読んでました。次の作品「ボーダー」もすごかった。今作もジェンダー的な女性のリアルな視点が鋭い…とザワザワしつつ、心底ビックリする展開(前情報なくキンドルで読んだので帯のコピーも読んでなかったので)。
後半をそれと向き合う展開も「ニコタマ」と同じく、大人な感じです。こんな作品を作れるのは渡辺ペコさんだけだと思う。もっと売れて欲しいし、もっとこの人の作品をたくさん読みたいです!
第4位 ムシヌユン - 都留泰作
新井英樹の「SCATTER -あなたがここにいてほしい-」の1巻を読んだ衝撃に近いです。
博士号を取れなかった虫が大好きな大学生が実家がある島へ帰郷。そこで初恋の女の子と会う。そこで嫌いだった同級生と結婚してたりセックスしているところを見ちゃったり、そもそもルサンチマンがたまりにたまっている主人公なので、それが大爆発!その瞬間に未知との遭遇。
今後の展開がまったく読めず、そもそも何が起きているのか?よくわからないけど極上の面白い漫画。ギャグとSFが混ざっていて、こういうのナンセンスSFというのでしょうかね?こういうの好きだなぁ~。
第3位 ちーちゃんはちょっと足りない - 阿部 共実
ちーちゃんはちょっと足りない (少年チャンピオン・コミックスエクストラもっと!)
- 作者: 阿部共実
- 出版社/メーカー: 秋田書店
- 発売日: 2014/05/08
- メディア: コミック
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幼児みたいな中学生、ちーちゃんとその仲間達を描いた日常形漫画、よつばと!みたいな感じかと思いきや、阿部共実先生はそこで終わらすわけがなかった。
前作「空が灰色だから」で描かれてきた、思春期の自意識、嫉妬、ヒエラルキー、閉鎖間をどんどん盛り込み、そこに経済問題を持ち込んできた。
単純に貧乏だから、500円のリボンも買えない!でも…そこのちーちゃんの友達の葛藤、そのあと自己嫌悪。鬼畜です!
かなり後味が悪いお話ですが、かなりフレッシュな切り口の漫画だと思います。苦をあえて描かないことで日常系は成り立つと思うのですが、この作品では日常系とシリアルさをいい具合にキープして続いてほしいですね。というか1巻で完結しているみたいでした…。これからが面白くなりそうだったので、ちょっともったいないです。
第2位 母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。 - 宮川 さとし
母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。 (BUNCH COMICS)
- 作者: 宮川さとし
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2014/08/09
- メディア: コミック
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作者自身の母親の死を描いたエッセイ漫画。
ちょっと不吉なタイトルに惹かれて、読んでみたら泣きまくった漫画。もう半分ぐらいから泣いちゃって、おっさんが夜中一人でえんえんと泣いているのは大分見苦しかったと思うけど、これがもー涙が止まらない。
この漫画が秀逸なのが、最初のほうで母を泣くなり、そのあと思い出したかのようにさまざまなエピソードが語られる。
またそのエピソードが、悲しくて悲しくて…すごいんです。「でんちいれ」を書かれた箱を見つけて母の生きていた痕跡を見てもういないのかと感じたり、少し冷たいと思っていた兄が実は自分の時計の下に隠れるように母の形見の腕時計をつけていて、「どうだ?女々しいだろ」とか言っていたり、いまでも思い出すだけで泣いちゃいそうです。
葬式の次の日、寝ぼけ眼で携帯電話で葬儀場で撮影した画像を見て、母が死んだのは夢じゃないんだ…とこのシーンが現実味があって、自分をいずれこれ体験するんだと思うと今からちょっとキツイ。
だけどこの漫画、最後は前向きな話で終わるんです。人の死でいろいろ考え、それがきっかけでおっくうだったり勇気がなかったりしたことに普段でない思い切りが出て前に進んでいくって、こういったら不謹慎ですが、人の死ってすごい力があるなぁと思いました。
少し重い話ですが絵のタッチがシンプルで大分読みやすくなっているはず。こういう話だからこそ漫画の意味(裾野を広げるという意味)があると思います!いろいろな漫画ランキングを見てみたのですが、ランクインされているところがなかったようなので、是非是非いろんな人に読んでもらいたいです!
第1位 子供はわかってあげない - 田島 列島
手放しでおもしろい!万歳!万歳!と喜べるボーイ・ミーツ・ガールストーリーです!もうこういうのが読みたかった!!
物語は、夏の大会に向けて練習に励む水泳部のサクと、去年同じクラスだった書道部のもじ、二人の高校生がとあるきっかけで仲良くなる。ある日、サクがもじの家で新興宗教のお札が見つける。それをきっかけに生き別れた実の父に探しにひと夏の冒険に出る。
自分の中で、新興宗教が出てくる映画や漫画、小説などすべてにおいて当たりが多いというイメージがある。たとえば園子温の「愛のむきだし」やイ・チャンドンの「シークレット・サンシャイン」など。漫画だと堀尾省太の「刻刻」など。
この作品にも新興宗教が出てくるのだ。絵のタッチがゆるかったりして、普通の高校生の日常系青春漫画だと思ったりしていると「え!?」と不意なパンチを食らった気分になる。そのあと父の失踪事件、宗教団体資金が紛失、思っていたよりもハードボイルドな内容になっていくのだが、実はやっぱり全然ハードボイルドではない。作者の自意識を感じないセンス良いギャグ、地に足のついた良き大人達、またあくまでも純粋な普通の高校生の二人の視点から描かれているので、そのすべてがキラキラしている。
でもやっぱりハードボイルドな側面があって、後半とある登場自分が「○○さんじゃなかったら死んでいたかもね」的な台詞がドキっとする。このバランスに奇跡が起きていると思う。
そしてなんたって最高の告白シーンが見れる。このシーンは本当にすごい!
また、メッセージがとても味わい深い。クリント・イーストウッドの「グラン・トリノ」のメッセージのように、誰がに渡されたバトンを次の誰かにつないで行くことが、人間にとって最も大切ということだ。そんなメッセージを作中で様々な形で語られる。これが物語の深みを増している。
もうこんなに幸せな気分なれて、メッセージも味わい深い漫画は、本当になかなかないですよ!ここ数年でも最高の漫画に出合えた!と言えちゃうぐらいの熱量。
是非、少女の成長を描くのが得意な細田守監督あたりに、映画化してもらって映画館で幸せな気分になりたいところです!
今年のベスト10はこんな感じです。ここまでお付き合いしてくれた方、ありがとうございます!ここからは、ベスト10からあふれ出たけど、良かったので紹介したい!という紹介したい!そんな欲望のまま作品をあげていきます。
伊勢ともかの「懲役339年」は、宗教と革命の話をデストピア的な世界観でやっていて、考えさせてくれるし熱い展開もあったりで純粋に面白い。
近藤ようこの「五色の舟」も戦争という重いテーマを、戦争の無かった世界が出てきたりとSFとしても十分面白いし、考えさせられたなぁ。
食漫画というか酒漫画ですが、須賀原洋行の「実在ゲキウマ地酒日記」を読んでこの影響で、日本酒の銘柄にちょっとだけこだわりはじめました。そしてラストには驚き。この漫画は作者の魂の結晶だったんですね。
安定的におもしろかったのが、日暮キノコの「喰う寝る住むふたり」、清野 とおるの「ウヒョッ!東京都北区赤羽」、石黒正数の「それでも町は廻っている」でこの辺は、読んでいると精神が安定するし、終わるまで読み続けると思う。
それでも町は廻っている (13) (ヤングキングコミックス)
- 作者: 石黒正数
- 出版社/メーカー: 少年画報社
- 発売日: 2014/09/30
- メディア: コミック
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大ヒット中の諫山創の「進撃の巨人」も、内容がどんどんハードになったり、政治的な話になってきて別の面白さが出てきた。諫山先生は勉強家だと思う。
今年終わった漫画では、堀尾省太の「刻刻」、久保ミツロウの「アゲイン」、福島聡の「星屑ニーナ」も納得できるラストで満足でした。
アゲイン!!(12)<完> (KCデラックス 週刊少年マガジン)
- 作者: 久保ミツロウ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/05/16
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…ってことで今年はこんな感じです!!もし気になる作品がございましたら、是非手にとっても読んでみてくださいませ!そんな感じで来年も良い漫画と出合えるといいですな!
ちなみに去年のベスト10はこんな感じです。
サブカル糞野郎が選んだ!2013年の読んでおいたほうが良い漫画 ベスト10 - アイアムめんどくさいオジサン