めんどくさいオジサン

めんどくさいと言いながらいろいろやる趣味ブログ。最近は音楽制作とキャンプ。

2020年面白かった漫画5作品

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仕事納めの日。
例年通りであれば、帰りに行きつけの中華料理屋で温めた紹興酒と油淋鶏で納めていたのだけど、今年は自宅の二階に上がり妻と子供と一緒に夕食とって納めることになる。こう環境が変われば、考えることも少し変わるきっかけになる。

今年頭まで通っていたXデザイン学校で先生が「デザインにはリベラルアーツが大事」なんて言っていて、感染しやすい自分なのでそっかー!教養〜教教〜!となり前から気になっていた哲学の本を手にとった。とっていても入門書ばかりなんだけど、これがグサグサ刺さる。


その中で毎年を読んだ漫画をブログにあげる自分にとっては、NHKの「100de名著」で紹介していたブルデューの「ディスタンクシオン」がいろいろ腑に落ちた。

趣味は闘争。人々は自分以外の誰かよりもちょっとでも優位に立とうして、無意識に闘争をしているらしい。その闘争は自分の好き嫌いなどの趣味を互いに押し付けあっている。その闘争している場を界を言い、そのたくさんの界から俯瞰してみることによって、社会が浮かび上がってくるという。

例えば友人と漫画の話をしてるとします。自分が漫画「ワンピース」が好きでそれを推薦すると、友人が「ワンピース?あの軽さが嫌い。やっぱり鬼滅の刃でしょ?」となり、自分が「いやいや、鬼滅の刃は重すぎて軽く読めない」となります。これは界における闘争がはじまっているようです。


また今年読んで面白かった漫画をあげようと思って、本心は「チェンソーマン」を良かったと思いつつ、話題作だしあげるのはやめとこう、または前作「ファイアパンチ」からチェックしていたからとか、いや逆にチェンソーマンでしょ!?となったり、これも闘争が始まっているってことです。

この趣味というの言葉をもっと大きく捉えると、好みや優先事項となって、最終的にはその人のアイデンティーとなる。そう考えると闘争からいろいろ見えてくれるなーととても勉強になる本でした。

 

そんなわけで一人闘争である今年読んだ面白かった漫画を紹介しようと思う。

 

竜女戦記 / 都留泰作

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ぶっ壊れ過ぎた最高SF作品「ムシヌユン」の都留泰作が和製「ゲーム・オブ・スローン」を目指しているということで絶対面白いと思い読んだみた。スケールの大きさやキャラクター同士の駆け引きや政治が確かに「ゲーム・オブ・スローン」を思わせる。

また「ムシヌユン」同様、とても濃ゆいキュラクター(いつも全裸でブラーンとしているおじいさんがいたり)が登場し、笑いながらその世界観に吸い込まれる。

 

竜女戦記 1

竜女戦記 1

 

 

無能の鷹 / はんざき朝未

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有名コンサル会社を舞台にしたお仕事漫画で、スマートな身のこなし、落ち着いた声、着慣れたスーツ、自信に満ちあふれているのに謙虚な女性、鷹野が実は全然仕事ができず、社内ニートになっているというギャグ漫画でもある。

しかし、仕事に対して本質的なことが描かれいる気がする。仕事に対する向き合い方は、例えば「楽するために働く」「自分に自信をつけるために働く」「金のために働く」など人それぞれで、その一つ一つは不定できるものではないということが描かれており、仕事観に対してとても広い多様性を感じさせる素晴らしい作品。

 

無能の鷹(1) (Kissコミックス)

無能の鷹(1) (Kissコミックス)

 

 

ヤンキー君と白杖ガール / うおやま

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弱視の女子高生とヤンキーのラブコメ作品。弱視の人の知らない世界を知りたいという思いから読み始めたが、もっと普遍的な世界のあり方について書かれたスケールが大きいテーマの漫画でした。本当に絵柄から舐めていた案件。

特にバイト編に入ってから、労働と障害という難しいテーマに向き合い、所々にはっとさせられた。4巻ラストが主人公側ではなく、あるサブの登場人物の視点から描かれているシーンがあるのだが、悲しさ?寂しさ?後悔?なんとも言えない気持ちになって、こんな複雑な気持ちにさせてくれて、中年ながらちょっと震えちゃいました。

 

ヤンキー君と白杖ガール 1 (MFC)

ヤンキー君と白杖ガール 1 (MFC)

 

 

水は海に向かって流れる /  田島列島

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前作「子供はわけってあげない」が大好きで何度も読み返しながら待ちに待った、田島列島の新作。

一見、おおらかさが溢れている作品だが、その裏に誰も傷つけないという気遣いがとても丁寧に設計してあり、針穴に糸を通すような作品。そのぶんラストの大胆さは最高のカタルシスでした。

 

 

この町ではひとり / 山本さほ

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岡崎に捧ぐ」が有名の山本さほの実体験に基づいた作品。著者が美大を落ちたことより、人生をリセットしようと一人で神戸に引っ越したその一年間のお話。「岡崎に捧ぐ」同様、ポジティブな作品と思いきや、とても不穏な作品。

読後感として、昼は自転車でブックオフを巡り、夜はちょっと悪い友人と車を走らせる、20代前半の自分の不穏で不毛な時期を思い出し、ちょっと辛くなりました。

しかし、そういう辛い思い出を成仏されるために作られた作品でもだけあって、あの頃からがあって今があるという作品同様で自分も決着できたが気がしました。

 

 

 

以上です。

来年は、好きな漫画や映画や本の話を居酒屋できるよう、願います。

とりあえず手洗いをしっかりして年末年始を過ごそうかと。

ゴールデンウィーク消費忘却録

 

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ゴールデンウィークが終わる。

実は5月から新しい職場なので、この期にデザインやプロジェクト推進の勉強するつもりでTrelloにもタスクを記入していたのだったのが、進捗20%ほどしか進まなかった。自粛を期に自分の時間が増えて新しいことをはじめよう!って人は多そうだけど、自分のように手付かずってパターン多そう。この現象、行動経済学で説明がつきそう。

連休中は漫画や本やドキュメンタリー見たりゲームもした。消費しかしてないので、なんとなくアウトプットしたく、消費したものの中で良かったものをザックリ書いていこうかと。

 

漫画

横須賀こずえ - 小田扉

団地ともお』の小田扉先生の新作。今回は犬が主人公だ。迷い犬のこずえが気づいたら、その家族の一員に。その過程がもうクスクスと笑っちゃう。一話完結型でストーリーは進み、日常パートだと思ったらセンスオブワンダーな世界に迷い込む。団地ともおの読後感に似ており、ファンにとって最高すぎる作品。 

横須賀こずえ(1) (ビッグコミックス)

横須賀こずえ(1) (ビッグコミックス)

 

 

冬物語原秀則

昭和の終わりから平成にヤングサンデーで連絡された青春もの。予備校生の主人公が恋愛にうつつを抜かすストーリー。この主人公が優柔不断で行動も幼稚でとても腹が立つのだが、昭和の終わりから平成のファッションや街並み、未成年が大衆居酒屋で飲んでいる風景などとてもおおらか時代の雰囲気がとても良かった。

冬物語(1) (ヤングサンデーコミックス)

冬物語(1) (ヤングサンデーコミックス)

 

 

ちさ×ポン - 中野 純子

自分が大学時代(2001〜2005年)にヤングジャンプで連載されていた漫画。性描写が多くて当時鼻の下伸ばして少し読んでいた作品なんだけど、ちょっとレイドバックして浸ってみるかと思って読んでみた。やはり性描写が多い作品であったが、改めて読み直してみると当時の青年誌で性についてかなり啓蒙的(ふたりエッチとは別の意味)だったりで読後、少し背筋が伸びた。レイプ被害にあった主人公が彼氏の提案で旅で出る。そこでの回復のストーリーは誠実で涙が出そうになった。当時よりフェミニズムが強くなった現代だったら、中野純子先生(2012年に当時45歳で亡くなりました)はどんな作品を書くのだろうと物思いにふけった。

 

インタフェースデザインのお約束 ―優れたUXを実現するための101のルール - Will Grant

UIのお約束が101個にまとまっていて、オライリーの割には読みやすかった。使いづらいUIを例に挙げては、そのUIに対してネチネチと愚痴っぽく書かれていてニヤニヤしちゃった。なぜに著者はここまで怒っているかと言うと、自分の限りある時間を無駄にされたからだ。デザイナーは人の限りある時間を無駄にさせてはならないと再認識した。

インタフェースデザインのお約束 ―優れたUXを実現するための101のルール

インタフェースデザインのお約束 ―優れたUXを実現するための101のルール

  • 作者:Will Grant
  • 発売日: 2019/11/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

エンジニアリング組織論への招待 ~不確実性に向き合う思考と組織のリファクタリング - 広木 大地

前職でとあるBtoCサービスを立ち上げ、失敗しちゃって。そこではメンバー内の不和、先が見えない不安、結果半数以上でプロジェクトを離脱(退職)して、自分もこれが原因で会社を離れることになった。この本で書かれていることは、いかに不確実性をなくすことが良い方向に導くことになるか、説得力を持って書かれている。読んでいて共感しかなかった。また、アジャイルを歴史から紐解いて、源流はアメリカ西海外のヒッピー文化から来てて、ドラッグとロックは世界を新しい方向へは導けなかったが、コンピューターはそれができた!という胸熱なことも書かれていた。チーム重視で仕事を進める人全般におすすめしたい本だ。

 

ドキュメンタリー

NHKスペシャル「ヒグマと老漁師~世界遺産・知床を生きる~」

知床で漁師をするおじさんとヒグマのドキュメンタリー。ヒグマが数十メートル先にいるのにおじさんが「コラ」と叱って追い払うシーンが何度も出て来て、これが普通なの?いや待て凶暴なヒグマだぞ…クラクラする映像…すごい。後半、ユネスコの調査団がおじさんのところに来るのだが、調査中にヒグマ数匹が囲い込まれる。そこでおじさんが睨みを利かすと熊達が逃げていき、調査団が驚く。人間とヒグマ共存という報告は今までに類を見ないと。

見終わった後、環境保護に関心が深まり色々調べたら、基本的にはきちんと生き物たちとの間に境界線を作り、そのゾーニングをした上で、生き物たちの恵みを自分たちで管理するような社会を作ることが良いらしく、この知床で起きていることは異例中の異例なんだと思った。

ちなみにNスペはAmazonプライムの有料プランで見れます。72時間とかねほりんぱほりんがあるので最高!

 

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ゲーム

VA-11 Hall-A ヴァルハラ

20XX年、サイバーパンクの世界でバーテンダーとして、サイボーグやアンドロイド、人間に対して、愚痴を聞きながらカクテルを提供するゲーム。AKIRA攻殻機動隊が好きな自分にとって世界観が最高で、その世界でモブキャラに慣れる感覚。しかし、語られる仕事観、恋愛観、価値観、倫理などリアルというか、とても大人な内容で飲みながらでゲームをやっていると、ついつい飲みすぎちゃう。 

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VA-11 Hall-A ヴァルハラ - Switch

VA-11 Hall-A ヴァルハラ - Switch

  • 発売日: 2019/05/30
  • メディア: Video Game
 

 

Death Stranding

去年末、何かを話題になった小島秀夫のゲーム。映像やストーリーにクオリティーの高さに驚き、出演者もあれどっかで見てことあるなと調べて見たら、マッツ・ミケルセンニコラス・ウィンディング・レフンギレルモ・デル・トロなど超豪華で再度驚いた。また誰もいない荒野や山道を一人彷徨うゲーム体験は、まさにソーシャルディスタンスであり、堂々と遊びに行けない今こそやる価値があるゲームだと思った。暗い内容だけど、なんか少し元気が出た。

【PS4】DEATH STRANDING

【PS4】DEATH STRANDING

  • 発売日: 2019/11/08
  • メディア: Video Game
 

 

以上。

ゴールデンウィーク何もできなかったなーと思っていたけど、書いてみるとそれなりに充実していたかも。

 

「団地ともお」33巻、最終巻を読み終えて

少しまえだけど、小田扉の「団地ともお」という漫画が33巻で完結した。

 

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16年間連載を連載していて、自分は20代前半のころから単行本で読み始めた。たしか文化庁のメディア芸術祭で何かしらの賞を受賞して、そのきっかけで知った。もしくはこの漫画がすごい!だったかな。忘れた。

たしかその頃、自分の中で懐古的なものに憧れを抱いていた時期で、三丁目の夕日の映画で感動してたりした。とにかく忙しい仕事についていた。ろくでもなったけど。あと練馬の狭いマンションに住んでいた。懐かしい。

団地ともおは巻をかさねるごとに不思議は読み心地になっていた。ノスタルジックな世界観の中で、ほっこりする話をありつつ、随所に難解なお話だったりどんな気持ちになれば良いかわからなくなるお話だったり。すごくカッコ良くちょっと飛躍して言うとブルーベルベットのような不条理。そこにご飯の上に鰹節をのっけた安心感。伝えたいことは?なんでしょうかね〜というような態度がすごく上品。

心地良いぬるま湯のような塩梅で、しかもたまに知らないところに飛ばしてくれる。その時期から最後まで、若者からおじさんになるまで、「それでも町は廻っている」と別のベクトルで、自分をリラックスさせてくれる漫画だった。

思わずそういう考え方もあるのかと唸った回もあった。覚えているのがともおの父が、毎日お祈りをするのが仕事の部署に異動。そこで社長に見出され、なぜこんな部署があるのか?という質問に、自分の力でのみを信じ続けてしまうと自分に自惚れてしまう。なのでお祈りをして、成果が出るとお祈りのおかげだと思うようにすると謙虚になれると。なんだがすごく納得した。その考え方は好きだ。そんな風に唸る回は他にもあったけど忘れた。

あと団地ともおに出てくる小道具がいちいち心を突かれた。魚をまるまる揚げたなんども出てくるあの料理、あのビジュアルがすごい。あんなに人をほんわかさせるものはない。あの料理はずっと自分の記憶に残ると思う。

ただ、この漫画の魅力をうまく伝えることは難しかった。好きな漫画の話になるといろんな角度で見て最高なのは団地ともおと答える時期があったけど、説明に苦労した。今ならヴィンランドサガと答えるかもしれないけど、やっぱりいろんな角度で見ると団地ともおだ。

妻の母に団地ともおを貸したら、青木さんが好き!と言ってもらい、1巻から33巻まで完読。嬉しかった。

そんな自分は最終巻である33巻を読み終えると、余韻には浸るなどほとんどなく、通り過ぎって行った感じ。googleで検索しても最終巻の感想があまりなかったのもそういうことだと思う。それがなんだかすごくしっくりきた。

とにかく団地ともおが好きだ。どんだけ好きだったかというと、第一子の息子にともおと名付けるほど。

今のところすくすく育って、ともおというよりかよしのぶのように豊かな子だが、とにかくそういうことなんだ。

団地ともお (33) (ビッグコミックス)

団地ともお (33) (ビッグコミックス)

 
団地ともお(1) ビッグコミックス

団地ともお(1) ビッグコミックス