少しまえだけど、小田扉の「団地ともお」という漫画が33巻で完結した。
16年間連載を連載していて、自分は20代前半のころから単行本で読み始めた。たしか文化庁のメディア芸術祭で何かしらの賞を受賞して、そのきっかけで知った。もしくはこの漫画がすごい!だったかな。忘れた。
たしかその頃、自分の中で懐古的なものに憧れを抱いていた時期で、三丁目の夕日の映画で感動してたりした。とにかく忙しい仕事についていた。ろくでもなったけど。あと練馬の狭いマンションに住んでいた。懐かしい。
団地ともおは巻をかさねるごとに不思議は読み心地になっていた。ノスタルジックな世界観の中で、ほっこりする話をありつつ、随所に難解なお話だったりどんな気持ちになれば良いかわからなくなるお話だったり。すごくカッコ良くちょっと飛躍して言うとブルーベルベットのような不条理。そこにご飯の上に鰹節をのっけた安心感。伝えたいことは?なんでしょうかね〜というような態度がすごく上品。
心地良いぬるま湯のような塩梅で、しかもたまに知らないところに飛ばしてくれる。その時期から最後まで、若者からおじさんになるまで、「それでも町は廻っている」と別のベクトルで、自分をリラックスさせてくれる漫画だった。
思わずそういう考え方もあるのかと唸った回もあった。覚えているのがともおの父が、毎日お祈りをするのが仕事の部署に異動。そこで社長に見出され、なぜこんな部署があるのか?という質問に、自分の力でのみを信じ続けてしまうと自分に自惚れてしまう。なのでお祈りをして、成果が出るとお祈りのおかげだと思うようにすると謙虚になれると。なんだがすごく納得した。その考え方は好きだ。そんな風に唸る回は他にもあったけど忘れた。
あと団地ともおに出てくる小道具がいちいち心を突かれた。魚をまるまる揚げたなんども出てくるあの料理、あのビジュアルがすごい。あんなに人をほんわかさせるものはない。あの料理はずっと自分の記憶に残ると思う。
ただ、この漫画の魅力をうまく伝えることは難しかった。好きな漫画の話になるといろんな角度で見て最高なのは団地ともおと答える時期があったけど、説明に苦労した。今ならヴィンランドサガと答えるかもしれないけど、やっぱりいろんな角度で見ると団地ともおだ。
妻の母に団地ともおを貸したら、青木さんが好き!と言ってもらい、1巻から33巻まで完読。嬉しかった。
そんな自分は最終巻である33巻を読み終えると、余韻には浸るなどほとんどなく、通り過ぎって行った感じ。googleで検索しても最終巻の感想があまりなかったのもそういうことだと思う。それがなんだかすごくしっくりきた。
とにかく団地ともおが好きだ。どんだけ好きだったかというと、第一子の息子にともおと名付けるほど。
今のところすくすく育って、ともおというよりかよしのぶのように豊かな子だが、とにかくそういうことなんだ。