「心の中にお友達をつくるタイプの人に捧げる、福満版シックス・センス!!」
という帯にそんなにピーン!と来なかった福満しげゆきの新作「中2の男子と第6感」。
しかし、福満しげゆき先生のファンなので読んでみたら…SFと福満しげゆきの漫画によくある謎に説得力の設定と会話の妙がもう最高で。おもしろかったです!
また、自分は心の中にお友達はつくらなかったけど、プロレスの創造神になっていたことがあったな~と普段開けない記憶のフォルダを開けたみたいなので、そのことについて書こうと思います。
現実の辛さからの逃避方法
30代になり、結婚をして仕事にもそこそこ自信がつき、人並みだがそれなりにうまくやっているという自分。同じような環境の人だったら大体そんな感じではないだろうか。惨めで辛くて明日なんか来なきゃいいのに…と毎日思っていた頃の自分なんて想像がつかない。
「中2の男子と第6感」は、唐突にはじめる。中学生の男子が自分の部屋で高校生の女の子にボクシングやカポエラなど教わる。女の子はボクシングもカポエラの経験もないらしいのだが適当にダラダラと喋りながら教える。どことなく違和感がある世界観。
そして最後に下記のような噴出しで終わる。
今日も学校には…行かなかった……
どうやら不登校の少年のようだと思っていると、その理由が語られる。
学校でのイジメの辛さから、
「天からの声」をイメージして現状を耐え、それが駄目で…
架空の老人をイメージして、それが駄目で…
「もっと強いもう一人の自分」をイメージして、それが駄目で…
パッと浮かんだ女の子をしゃべらせることにした。
その妄想で生まれた女の子が、高校生の女の子である。
この一連の流れを読んでいるとき、辛かった中学時代、創造の世界で現状を耐えていたことを思い出した。
想像の中のプロレスリング
中学2年生の頃、席替えで校内でも相当な悪の不良と席が近くなって、話すようになった。立場は自分の方が低いけどそれなりにうまくやれた。そう最初はよかった。次第に悪くなっていく不良に距離を置くようになって避けていたら、その不良もそんな自分の気持ちに気づいたんだろうな…。無理やり暴力的なゲームに参加を強要されるようになって。
「いっせのーいち!」みたいなゲームで負けたらデコピン。
手をビンタし合ってひたすら痛みに耐えるゲーム。
肩パン大会。
K-1ごっこ。
…とエスカレートしていった。
最終的に、罰ゲームで女子から制服を借りて女装をするという仕打ちを受け、肉体的な痛みだけではなく、精神的な痛み。
毎日が辛くて、寝る前に天災が起きて明日が来なければいいのにと本当に願い、実際そんなことは起きるはずもなく、憂鬱な気持ちで登校してたっけ。
そのとき、とあるゲームの世界に没頭した。
「ファイヤープロレスリング」というゲームだ。
単純な2Dのプロレスゲームなのだが、エディットモードのようなものがあって、オリジナルのプロレスラーが作れるのだ。
そのモードで架空のプロレスラーを作った。当時好きだった三沢光晴のような、エルボーを得意としたプロレスラー。パワーボムが得意なパワー系の体が大きいプロレスラー。総合格闘技出身の仮面レスラーなどなど。想像力を限りたくさんのプロレスラーをつくった。
はじめは自分でそのオリジナルレスラーをプレイして遊んでいたのだが、そのうち世界一のプロレスラーを決めようと架空のトーナメント戦をはじめた。
参加レスラーは自分がつくったプロレスラーから、もともとこのゲームにいるプロレスラー。(ライセンスは取っていなかったようなので、ジャイアント馬場がアイアン・木場だったり、アントニオ猪木がビクトリー・武蔵だったりした 笑)
また、公平のため自分がプレイするのではなく、CPU同士で試合を行った。CPU同士で試合を行わせたのが正解で、自分がそのトーナメント戦の主催者になっているような…いやこの世界の創造神になっていた気分だったと思う。
それから、架空のタイトルベルトを作って、自分の作ったレスラーを初代チャンピオンにして何度も何度も防衛戦をさせたり、人間は野生に勝てることができるのか?と熊(たしかはじめからいたキャラクター)と人間のレスラーを戦わせたり…。そして成績表をノートに記録した。
学校で辛い時には、今日は2m50cmの○○選手とジュニア級に○○選手と○○選手の1対2の変則試合があるから、とりあえず今は大丈夫!その世界が待ってるから!と自分に言い聞かせて…毎日をどうにかこうにかしてやり過ごしていった。
いずれクラス替えでその不良とも距離をおけるようになって、「ファイヤープロレスリング」もやることがなくなった。
…と「中2の男子と第6感」を読んでなきゃこんなこと思い出さなかったかも。そんな話でした。
どうでしょう?みなさんもこのような経験ありませんかね。
まだ未読ですが、この小説は似たような物語らしいです。
「僕の小規模な生活」5巻では、きっと恋愛系で惨めだった自分を思い出すはずです。